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富田屋の珈琲新聞

香りについて2

第255号
2023.07.01発刊
カテゴリー
健康

香害についての仕組み

先月に続き、少し堅い話で申し訳ございません。バイセンマン自身が香害に悩み、化学物質過敏症を発症しかけているので香害についての情報を共有させていただいています。(香害の本を出した出版社の方によると僕はすでに化学物質過敏症と言われました)

僕も知らなかった香害についての仕組みを簡単に解説いたします。香りというのは鼻の奥に嗅覚受容体というそれぞれ形の異なる器の様なものがぶら下がっているそうです。例えば星型、三角、四角、丸型、ハート型、ひし形、などなど。例えば、ラベンダーの香りの形が三角なら、三角の形の化学物質を作れば脳はラベンダーの香りと認識するそうです。実際にはラベンダーの香りがしないのに?

そして、最近の香りの長持ちする柔軟剤などはマイクロカプセルという小さなカプセルに人工香料が入っています。触れたり温度が上がると壊れて中の香りが出てきます。そして、このマイクロカプセルの成分はイソシアネートという強いアレルギー性の化学物質。粘膜を刺激してアレルギー症状を起こします。イソシアネートは塗料、接着剤にも使われています。この人工香料とイソシアネートがセットになっているのが問題です。

まず、イソシアネートでアレルギーを引き起こします。その後、何度も同じことが続くとイソシアネートが無くてもその香り自体にも反応が出てしまい、パブロフの犬のようになってしまうのです。例えば怖い上司が怒っている写真を見ただけで、腹痛や頭痛を感じるように。実際には上司はおらず、怒ってもいないのに。本当は人工香料だけではアレルギーにならなかったかも知れないところが香りの記憶と心身の反応(咳、頭痛、吐き気など)が強力に結びついているために、香りを嗅ぐと心身の反応を思い出しイソシアネートが無くても勝手に反応が出てしまうのです。

出版社の方も化学物質過敏症になり東京から那須へ引っ越されたのですが、その方は本物のバラの香りを嗅いでも反応が出るようになったのです。香りの形を本物と同じに作っているので冷静に考えると当然と思えますが化学物質過敏症は人工香料にだけ反応すると考えていたので大変驚きでした。

化学物質過敏症の患者やその可能性がある人は全国で400万人いると推計されています。赤ちゃんや小さい子(あるいはペットも)は何が原因で咳や喘息になっているか分かりづらいですが、そのような原因があるかもしれないのです。幼稚園、保育園、学校、病院などでは、気を付けていただきたいところです。除菌消臭スプレーもイソシアネートが使われているので極めて厄介な商品です。

先程の出版社の方の話によると香害の本「空気の授業」を書かれている開成中学高校の元校長の柳沢幸雄さんは「開成中学高校の生徒で香り付きの柔軟剤を使っている生徒はいない」とのことです(校長していた当時)。全国でも名高い学校では当たり前のことのようです。これは学校からの指導ではなく自然とそうなっているそうで、それも驚きです。勝手な推測ですが、この学校の保護者の方たちはマイクロカプセルや人工香料を人が吸うとパフォーマンスが落ちることを勘で気付いているのかも知れません。一流のスポーツ選手たちの人工香料入り柔軟剤の使用率も知りたいところです。

実は蔵の改修も自宅の改修時も化学物質の少ない材料を使って下さいとお願いしていました。例えば集成材はなるべく使わない、とか、接着剤はなるべく使わないとか、壁紙は貼らない、塗料は塗らないなどです。今考えると良い選択でした。

先月の香りの話を読まれたお客様から「香害で悩んでおられたのですね。これから気を付けます」「香害についてもっと知らないとと思いました」「私も柔軟剤の香りが苦手です」なとメッセージをいただき、とても心強く感じました。

今後は柳沢先生を呼んで香りについてのイベントを開けたらなと考えています。

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