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富田屋の珈琲新聞

奈良少年刑務所

第247号
2022.11.01発刊
カテゴリー
学び

講演会に参加しました

2022.10.30寮美千子さんの講演会に参加しました。寮さんは1955年生まれの作家さん。僕は「世界はもっと美しくなる 奈良少年刑務所詩集」を読んで寮さんを知りました。

寮さんは2007年~2016年まで奈良少年刑務所の17~25歳の男性受刑者10人に1回90分の授業を毎月1度、半年間(6回)を1期として18期まで続け、計180人に授業されました。

初め、受刑者に詩の授業をして欲しいと刑務所から連絡が来た時は「無理だ、怖い」と思われたそうです。何せ、受刑者の犯罪を聞けば殺人、放火、レイプ、覚せい剤、窃盗などなど普通に生きている人からすれば極悪人ですので、当然の反応と言えるでしょう。他の日には絵の授業、コミュニケーションの授業が同じ時間数あるとはいえ、人生をこじらせ切った彼らに半年間で何か影響を与えれるなんて、まったく想像できなかったそうです。

そして、いざ、最初の授業。集まった10人は700人いる受刑者の中でも職業訓練で仲間と馴染めない子、虐められてしまっている子のベスト10だったそうです。ある子は教官の隣で小さくなっておびえ切って震えている子、オレ様オーラ全開の子、薄ら笑いを浮かべている子、チック症状のひどい子、吃音のひどい子、下を向いて土のように固まっている子…。

そんな子たちに「おおかみのこがはしってきて」という絵本を読み聞かせ、彼らがお父さん役と子役を朗読するという授業をしたそうです。初めは誰もが朗読したくないと言っていたそうですが、最初の2人がどうにか決まり、朗読が始まりました。朗読する方も緊張していたでしょうが、聞いている8人の子も手に汗握って聞いていたそうです。
最後まで読み切ると、8人の子たちが拍手喝采!
「え?何が起こったの?」というような妙な顔をしていたそうです。それまで人から褒めてもらったり、拍手されるなんてことが無かったためです。その後は他の子も朗読して、その日の最後には僕はお父さん役をやってみたい、子ども役をやってみたいと大盛況だったようです。ただ、吃音のある1人の子は最後まで朗読したくないとやらなかったそうです…。

2回目の授業は絵本「どんぐりのたたかい」の朗読会。5人ぐらいの役があるため全開よりスムーズに朗読を進めるのは難しいようです。なのに見学に来た教官に「あの子たちがこんなに笑って絵本の朗読をまるで劇のようにスムーズにしているなんて。何日ぐらい練習したんですか?」と聞かれて「今日初めてです」と答えるとたいそう驚かれたそうです。
とにかくこの場では最初に、楽にコミュニケーション出来るための授業、社会に出て嫌なことは嫌と言えるための授業、リラックスしてもらいたい、点数や評価を一切付けない、彼らを否定しない、先輩ぶらない、教訓を垂れないという事を話したそうです。

初日に朗読しなかった子に「朗読しなくてもいいよ。でも、やりたくなったらいつでも言ってね」と教官が伝えると、次の授業では朗読をして、さらに「初めて信頼できる大人に出会えました」と言ったそうです。この子は6回の授業の最後の方では吃音もほとんど無くなり、スラスラと喋れるようになり尞さんも教官も驚いたそうです。

講演会の内容が濃すぎて1回の豆まめ話では納まりきらないかもしれません。講演中に僕の涙スイッチが入り、じわじわと涙と鼻水が溢れ出てきました。会場でも鼻をススル音がチラホラ聞こえていました。「もうこれ以上聞いたら号泣してしまうから退席せんと!」と思いましたが、ギリギリ耐えました。

親や先生は自分の描く理想やレールに沿った時は喜び、子どもの声はほとんど聞こえていないのかも。もっと子どもの声を聴いていれば犯罪者にならずに済んだのかも知れません。教官は「彼らは犯罪者になる前に被害者だったんですよ」と言ったそうです。(続くかも・・・)

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